「最近やっと、自分の求める音を、自分のステレオから出せるようになったと感じられるようになりました!」
などと、豪語してしまいました、stereofanです。
ところがところが、
ステレオ歴40年をこえているにもかかわらず、「あなたの求める音は?」と面と向かって問われると、一瞬、「ウッ」と詰まってしまう自分がいます。
求める音は、年を重ねるごとに変化してきました。
この趣味を始めた最初の頃は、
自分のステレオ装置の不満の裏返し=求める音でした。
もっと高音の伸びが欲しい、低音の量感が欲しい、もっとくっきり明確にしたい、もっと雰囲気が欲しい、
などなど。
いろいろと欲張りな自分でした。
そんな私が、自分の求める音について考えるようになったきっかけをつくってくれたは、ステレオ評論家の長岡鉄男(ながおか てつお、1926年-2000年)氏でした。

長岡氏は、自作スピーカーの記事や、その歯に衣着せぬ評論が、絶大な人気を集めたオーディオ評論家です。
死後20年近くたった今でも、氏を深く敬愛し、慕う人は多く、その影響力の大きさがうかがわれます。
私も、若い頃は、氏の著作をむさぼるように読み、氏の設計したスピーカーをせっせと製作し、氏が「コストパフォーマンスが高い」と評価した機材を購入しましたが、期待を裏切られたことは一度もありません。
しかし、一番驚いたのは、氏が推薦するLPレコードの音の良さでした。
氏が推奨するレコードは、古楽演奏だったり、現代音楽だったり、ドキュメンタリーだったり、へんてこな珍しいものが多かったのですが、
いずれも、すごく音が良かった。

煌き、華麗に散乱する高音。
猛スピードでぶっ飛んでくる低音。
そして何より、
そこにあって、触ることができそうな「音像」と
リスニングルームの空気を一変させるような「音場感」。
「そもそも、ソフトに入っていない音は、逆立ちしても出てこない。」という、氏の言葉を実感しました。
氏の推奨するLPやCDを苦労して入手し(ほとんどが輸入盤でした)、
夢中になって聴いているうちに、
自分は、
- 立体感のある生生しい音
- 臨場感のある音
を求めているのだと気づかされました。
低音や高音、ダイナミックレンジなどは、手段にすぎず、
目的は、目の前に、アンサンブルやオーケストラ、ジャズバンドを出現させることなのだと。
これが俺の求める音だ!
じゃあ、お前は自分のシステムで、目の前にオーケストラを出現させることができているのか、と問われると、
………。
うん、まあーあ、いいところまでいってるんじゃない、
と言うしかないです。
欲を言えばきりがありません。
どこかで妥協して、自己満足しなけりゃ音楽を楽しめないじゃないですか。
ははは。
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